ヤミテラスサイファー 父と家を失った日 忍者ブログ
トミーウォーカーのPBW、サイキックハーツの自キャラの記録です。 設定記事は随時更新
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「ただい――」
 小学生になったばかりのある日。
 学校から帰った僕を迎えたのは、真っ赤に染まる室内と、鉄の臭い。
 目の前の惨状と鼻につく臭いに、頭がクラクラする。
「射雲、逃げて!」
 聞きなれた声にハッとして目を開けると、部屋の奥に母さんがいた。
 そして、母さんの前に、真っ赤な何かがいた。
「父、さん……?」
 こちらを向いてニヤリと笑うその何かは、父さんによく似ていた。
 でも、父さんじゃない。
 父さんだった、もの。
 それは母さんに向き直り、腕を振り上げた。
「やめろー!」
 僕は何も考えず、それに手を伸ばした。
 ただ、母さんを守ろうと、必死だった。
 何が起きたのか、わからなかった。
 ただ、眩しく不思議な力を感じる光に包まれたことだけ、覚えている。
 気付いたときには、従姉の家にいた。
「信じ……したら……」
 近くの部屋で話しているのか、母さんの声が断片的に聞こえてくる。
 あの光は、何だったのだろう。
 あの時感じた力は一体――
「あ、いっくん、気がついたんだ」
「大空、姉ぇ……」
 従姉の1人、大空姉ぇに声をかけられ起き上がろうとしたが、力が入らない。
 まだ、頭がクラクラしている。
「寝てなきゃダメよ。熱あるんだから」
 そう言われ、僕は素直に従うことにした。
 翌日、目を覚ました僕に、母さんが言った。
「射雲、今日から、この家に住むことになったからね」
 僕たちの、父さんと、母さんと、僕が暮らしていた家はどうなるんだろう。
 そう考えているのがわかったのか、母さんが答えをくれた。
「あの家は、もう、ないの」
 母さんが、寂しそうに、微笑んだ。
「どうして……」
「火事で、全部、燃えてしまったの」
 帰る場所も、思い出も、全部。
 産まれたときからそこに住んでいた。
 それが、失われた。
 悪い奴が、父さんを殺した。
 家が火事になったのも、きっと、偶然なんかじゃない。
 きっと、悪い奴がやったんだ。
 父さんは……?
 あの不思議な光に包まれたとき、父さんが倒れたように思う。
 そうか。僕が、父さんを殺したんだ。
 僕が――
 再び、意識を手放した。
 その直前、
「ごめんね、射雲……」
 母さんが、そう言ったような、気がした。
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